オーストラリアのタックスリターン(確定申告)のまとめ

オーストラリアにワーキングホリデーで渡航する方は、ほぼ全員が何かしらのアルバイトをされます。
また、オーストラリアの学生ビザは「2週間で40時間内」という条件がありますが、長期留学される方はアルバイトで生活費をカバーする方も少なくありません。
アルバイトで収入を得ると税金が発生することは誰でもご存知だと思います。当然、オーストラリア国内においても、税金の支払い義務が発生します。
税金は源泉徴収で雇用主が皆さんの給与から天引きで国に支払っていますが、日本とは異なりオーストラリアではタックスリターン(確定申告)をしなくてはなりません。
ただし、ワーホリの場合、2017年7月1日以降の収入に関しては、タックスリターンを出さなくても良い場合がほとんどとなっています。
タックスリターンを行う場合、個人で行うのはハードルが高いため、通常は地元の税理士を通して申告するのが一般的です。税務署の申請サイトは全て英語表記ですし、専門用語もたくさん出てくるので、なかなか個人で挑戦する人はいません。
そこで、今回はシドニーにある甘利会計事務所監修のもと、オーストラリアのタックスリターンのルールや申請時期などをまとめて紹介したいと思います。なお、掲載情報は2019年版となります。

甘利税理士事務所
電話番号: (02) 9223 7448
WEB: http://www.taxjp.com.au/
メール: info@taxjp.com.au
営業時間: 月~金 10:00 – 18:00
※7~10月は土曜も営業(要事前予約)
タックスリターンは必ず申告しないといけない?
タックスリターンとは、日本語で訳すと確定申告と言う意味になります。
日本だと確定申告は副収入がある人しか申告しないイメージがありますし、これまでの人生で確定申告したことが無い人の方が多いかも知れません。
しかし、オーストラリアで収入があった場合、タックスリターンの申請は義務であることを忘れないようにしておきましょう。
タックスリターンの申請が遅れたり、申請をしなかったりした場合は、罰金のペナルティー(年間1,050ドル)が課せられるルールになってるので、あまり適当に考えない方が良さそうです。
ただし、上記でも触れましたが、ワーホリに関してはタックスリターンを出さなくても良いケースもあります。
以下、ワーホリでタックスリターンをしなくて良いケースです。
オーストラリアの会計年度は、7月1日から翌年6月30日です。ちなみに日本では、1月1日から12月31日までの収入に対して確定申告を行います。
簡単に説明すると、「確定申告の1年の区切りがいつからいつまでか?」ということ。
オーストラリアでは、7月1日~6月30日までの収入が1年間の収入として確定申告することになります。
自分でタックスリターンをする場合は、7月1日から10月31日までにATO(Australian Taxation Office: オーストラリア国税庁)に申告します。
上記の通り、期限を過ぎると罰金の対象となりますが、登録税理士を通して申告する場合は翌年の5月15日まで期間が延長されます。
※なお、過去に未申告のタックスリターンがある場合は期間延長ができません。
タックスリターンをする側のメリットは?
日本だと確定申告を行うと、追加で税金を支払うイメージの方が強いと思います。
しかし、オーストラリアのタックスリターンでは、税金を追加で支払う場合ももちろんありますが、戻ってくる可能性も大いにあります。
それは、アルバイトに関連するものを購入した場合、それらを経費として計上することができる範囲が日本に比べて広いからです。
日本だと殆どのものが経費として認められません。しかし、オーストラリアでは経費と認められる範囲がとても広いのです。
例えば、オフィスワークをしている方だとパソコンや周辺機器、書籍や文具などの購入、インターネットの通信費、取引先への交通費、などなど。
これらのレシートを保管しておき、タックスリターンの際に税理士に提出すれば、その分が経費として申告してくれて、経費の税金分が還付金として戻ってくるのです。
ただし、これら経費として認められるかどうかは細かいルールがあるワケで、個人で判断することが大変難しいのです。
間違って申告して税務署から指摘を受けたら、その後の手続きも面倒なことになります。
税理士を利用していれば、どれが経費にできるかプロが仕分けしてくれます。
そのため、「税理士を利用しましょう!」と言う話につながるのです。
経費にできる項目が少ない職種は?
上記では、オフィスワークをしている方の経費の例を説明しました。ただ、多くのワーホリや学生ビザの方々で、オフィスワークをしている方の方が少数派です。
多くのワーホリは、カフェやレストランなどのサービス業で働くケースが一般的です。
「私はカフェのバイトだし、経費にできるモノなんてないんじゃないの!?」という声は良く聞かれます。
確かに、サービス業で働く場合、仕事柄あまり経費にできそうなモノは無さそうなイメージです。
これらのサービス業で働く方の場合、どんなモノが経費になるのでしょうか?
・仕事で使用する道具類
・仕事に関する書籍
・ユニホーム(制服)
・ユニホームの洗濯代
主にこんなところでしょうか。
人によっては、シフトやメニュー作成などのパソコンを業務で使う場合もあるかも知れませんが、そのパソコンやソフトも経費になります。
レストランで働く場合は、RSA(Responsible Service of Alcohol)の取得を求められますが、RSAコースの費用も経費になります。その他、仕事に関連するコースに通った学費は、経費に認められる可能性があるので税理士に相談を!
ただし、学生ビザで通ったコースは、仕事に関連している内容であっても、経費として認められません。

→ ワーホリの多くはカフェやレストランなどサービス業で働く人が多い。
税金を多く支払うケースはあるの?
経費になるモノが多ければ多いほど、タックスリターンで戻ってくるお金は多くなります。当然、経費になるモノが少なければ、戻ってくるお金は僅かな金額になります。
ワーホリや学生ビザの方の場合、タックスリターンをした結果、追加で税金を支払うことは稀だと思います。
どんな場合に税金を多く支払う可能性があるのか、以下にまとめました。
→ フリーランスでWEBデザインを依頼されて、個人事業主としての収入があるなど。
→ オーストラリア国内に不動産を持っていて、賃貸収入がある。普通は無いですね…。(笑)
→ オーストラリア国内での投資収入がある方は、こうした投資収入があれば税金を支払う義務が発生します。
→ オーストラリア国外に住んでるが、オーストラリアから収入を得ている人。例えば、インターネットだけで仕事が成立し、海外からでも仕事が成立するような職種。これもなかなか無いでしょう。
あとは、複数の職場で働いていている場合、追加で税金を支払う可能性があります。ワーホリの税率は以下の通りです。
1つの企業で働いていた場合は問題ありませんが、複数の企業で働いていて収入金額が合計37,000ドルを越える場合。
それぞれの企業では15%の課税による源泉徴収されています。しかし、合計37,000ドルを越えると32.5%の税率になるためタックスリターンの結果、追加の支払いが発生することになります。
ただ、37,000ドル(約300万円)をアルバイトで稼ぐのは、なかなか普通のアルバイトではあり得ない金額となるので、一般的では無いですね!
ワーホリビザと学生ビザとの税率の違い
2017年7月1日以降、ワーホリは非居住者扱いになります。それより前の収入については居住者扱いになったり非居住者扱いになったりします。
現在ワーホリの税金については、先に述べましたようにほとんどの場合タックスリターンの義務がなくなっています。
しかし、会計年度内にビザをワーホリから学生に、または他のビザからワーホリにした場合には、居住者・非居住者扱いの判断が難しくなるので注意が必要です。税理士に相談しましょう!
一方、6カ月以上滞在する学生ビザの方は、昔も今も「居住者」扱いのまま変わりません。
居住者の税率は以下の通りです。
課税所得 | 税率 | 税金の計算方法 |
0~18,200 | 0% | 非課税 |
18,201~37,000 | 19% | (収入 – 18,200) × 0.19 |
37,001~90,000 | 32.5% | (収入 – 37,000) × 0.325 + 3,572 |
90,001~180,000 | 37% | (収入 – 87,000) × 0.37 + 20,797 |
180,000~ | 45% | (収入 – 180,000) × 0.45 + 54,097 |
学生ビザの方で、6カ月以上滞在していれば、現地在住のオーストラリア人と同等の税率になり、年収18,200ドルまでは非課税扱いとなります。
これは、同じ仕事をしていたら、学生ビザの人の方が手取り額は15%分高くなることを意味します。
学生ビザの方は、働ける時間数に「2週間で40時間内」という制限があるものの、給与の手取りと言う意味ではワーホリよりも有利となります。
ワーホリビザと学生ビザだとどっちが有利?
ワーホリビザは「非居住者」扱いのため、学生ビザよりも税率が高く不利であることは上記で説明しました。
さらに、ワーホリビザの不利な点がもう1つあります。
それは、「同一雇用主の元で働けるのは6カ月まで」という法律があること。
ワーホリビザの方は学校に通っていなければ、終日融通が利くことから、雇用主からするとシフト調整に融通が利くので大変重宝します。
しかし、ワーホリビザの方は6カ月経過すると、その会社を強制的に辞めないといけません。
雇い主の悩みとしては、「せっかく育てた人材が半年でいなくなるのはキツイ!」という側面があるのも事実です。
そのため、専門学校や大学で長期滞在している学生ビザ保持者を好んで採用する企業もあると聞きます。
ただし、学生ビザ保持者は、学校に通うことが前提の人達なので、ワーホリのように終日融通が利くワケではありません。
ただ、長ければ数年単位で働いて貰える学生ビザの方は、企業にとっては大きな戦力だったりします。
そのため、シフトは学生ビザの方を優先的に入れて、空いてるシフトにワーホリを入れて行くといった調整をするケースもあるそうです。
どちらのビザもメリットとデメリットがありますが、決して「学生ビザは不利ではない!」ことを分かって頂けたのではないでしょうか。
同一雇用主のもとでも6カ月間以上働けるケース
ワーホリ制度のデメリットとして、1つの会社で6か月間までしか働けない条件があることは、上記で説明した通りです。
ただ、条件が揃えば、合法的な抜け道もあります。
系列店(支店)がある企業であれば、合法的に同じ企業で6カ月間以上働けるのです!
働いてる会社が1つの店舗しか持っていなければ、最大6カ月間までしか働けません。しかし、複数の支店を持っている会社であれば、1つの支店で6カ月という扱いになるのです。
ある程度の規模の会社であれば、複数店舗を展開しているお店も少なくありません。その場合、1つの支店毎に6カ月間働ける扱いになるのです。
そうした会社を選ぶことで、もし職場が気に入った場合でも、他支店に移動という形を取ったり、両支店を掛け持ちしたりする形で6カ月間以上働き続けることができます。
1年間まるまる働くことが許されるケース
実は6カ月間以上働くことが許されている地域と職種があります。
田舎の地域で、なかなか働き手の少ない業種に限り、6カ月間までのルール無しに働くことができるのですが、都市部に住んでいるワーホリには関係の無い話になります。
1年間丸々働ける地域は以下の通りです。
・クイーンズランド州: 一部地域
・西オーストラリア州: 一部地域
さらに、以下の職種に限定されています。
・観光関連
・建設関係
・福祉関連
・鉱業
ファーム(農業)や観光関連の仕事は、ワーホリにも縁がある職種です。
セカンドワーホリやサードワーホリの権利を取得するために、ファームで働くのが一般的です。ファームは肉体労働を伴うため、働き手が慢性的に不足しています。それだけに、時給も高かったりします。
田舎の地域でファーム生活をしながら、「しっかりお金を貯めて、セカンドワーホリやサードワーホリを楽しみたい!」という目的を持っている人は最適です。
さらに、ファーム(農業)、漁業、鉱業等の「季節労働」に関しては、2018年11月5日より同一雇用主の元で12カ月間就労可能になりました。
この法律改正では、上記に示した指定地域も無くなりました。
オーストラリアのワーホリビザのルールは他国に比べて、めまぐるしくルールが緩和しています。
もし皆さんがワーホリする時期が数年先であれば、さらに何かしらルールが緩和されているかもしれませんね!

→ ファームなど季節労働は、1年まるまる働けるようになりました。
タックスリターンの手続き方法
基本的にタックスリターンは、税理士に依頼するのが一般的です。
気になる税理士への費用相場は60~100ドル程度になりますので、金銭的負担はそこまで大きくありません。
タックスリターンの申請時期である7月1日~10月31日までに自分で申請するか、税理士に依頼する形となります。
ちなみに税理士を通してタックスリターンする場合は、翌年の5月15日まで期限延長できます。
もしタックスリターンの手続きを忘れてて、締切期限である10月31日を過ぎてることに気付いた場合は、税理士を利用するしか方法がありません。
自分で手続きをトライして、手続き方法や申告金額が間違っていたら、ややこしいことになるので、税理士に依頼した方が話は早いです。
変なところで節約モードのスイッチが入る方がいますが、後から大変な思いをしないようにサクッと依頼してしまいましょう!

→ 自分でタックスリターンの手続きしても、数十ドルの節約にしかなりません…!
タックスリターンに必要な書類
税理士を利用する場合は、税理士が細かく教えてくれます。
基本的に必要書類を揃えて、税理士に提出するだけで、不備が無ければ数日で処理してくれます。
タックスリターンの申請に必要な書類は以下の通りです。
・経費の領収書
・本業以外に収入がある場合の書類
複数の会社で働いていた場合は、当然該当する企業の源泉徴収票を全て取り寄せましょう。通常、毎年7月上旬になると、会社から源泉徴収票が郵送や手渡し、メール添付などで送られてくるはずです。
既に会社退職していて、7月末になっても源泉徴収票が送られてこない場合は、会社の担当者に連絡して、源泉徴収票を送って貰うように手配しましょう。
上記3番目の補足をしておきます。本業以外の収入とは、銀行利息や投資収入、オーストラリア国外で発生した収入がある場合です。それらの関連書類を税理士に一緒に提出します。
スーパーアニュエーション(年金)の返金
スーパーアニュエーションとは、オーストラリアの年金制度です。
これは、オーストラリア在住者のみならず、ワーホリビザや学生ビザの一時滞在者も支払っている税金です。1カ月の給与額が450ドル以上の場合、雇用主に支払い義務が発生します。
雇用主が給料の9.5%分(2019年現在)を支払ってくれています。その積み立てられた年金を取り戻すことができるのです。ただ、支払った全額が戻ってくるワケではありません。
ワーホリの場合はスーパーアニュエーションの積立金額の35%、学生ビザ場合は65%を取り戻すことができます。
こちらも学生ビザの方が有利と言うことになりますね!
1年間近く働いていたら、それなりに積立額も増えているはずです。セカンドワーホリやサードワーホリで複数年ワーホリをしている方、学生ビザで専門学校や大学に通っている方は、積立額はかなりの金額になっているはずです。
スーパーアニュエーションの返金申請は、以下の条件もあります。タックスリターンと一緒に税理士に依頼しておきましょう。
税理士に依頼する際、手続きの費用相場は250~300ドル程度になります。
そのため、この金額を越えるだけの積立金が無い場合は、返金申請しても全て税理士報酬に消えてしまうので、申請する意味がありません。
タックスリターンとは異なり、スーパーアニュエーションの返金申請は義務ではありませんので、お金が戻ってくる場合にのみ申請すると良いでしょう。
日本に帰国してる場合どうしたら良いのか?
多くの留学生の場合、1年以内に帰国するのが多数派だと思います。タックスリターンの時期を迎えずに帰国する方も多かったりします。
例えば、6月20日にオーストラリアに入国し、翌年6月10日に日本に帰国してしまうようなケースです。
基本的に税理士とはメールのやり取りだけで手続きができます。7月1日から10月31日までの間にオーストラリアの税理士にコンタクトを取って、タックスリターンの申請をして貰いましょう。ただし、7月1日前でもタックスリターンができる例外もあります。
それは、既にビザが切れている方、また日本帰国を含むオーストラリアを2年以上出国する場合に限り、特別に7月1日以前にタックスリターンを申告できます。
いずれにせよ、帰国前に税理士にコンタクトを取って、タックスリターンとスーパーアニュエーションの手続き予約をしておくのが無難です。
帰国前に準備しておいた方が、書類も集めやすくスムーズだからです。
ある程度の規模の都市であれば、日本人税理士事務所がありますし、日本語で対応してくれますのでご安心を!
ちなみに、既に帰国してしまった方は、「戻ってくるお金も殆ど無いし、何より面倒!」という理由でタックスリターンをスルーしている方も見受けます。
一部のワーホリを除き、お金を稼いだらタックスリターンをすることは義務になっています。申告するのが本来あるべき姿なので、我々は相談を受けたら「タックスリターンはしましょう!」と返答せざるを得ません。
ただ、実際のところ、オーストラリアの国税庁の担当者が、日本まで追いかけて来ることも物理的に難しいことです。そのため、帰国してしまってる方に対しては、余程の収入があるか、大金の脱税が無い限りは、移民局側も見逃してるのが現実だったりします。
お金が少しでも戻ってくる余地があるなら、タックスリターンを申請するに越したことはありません。
・カナダのタックスリターン(確定申告)のまとめ