日本は「ロックダウン」できない?そもそも「緊急事態宣言」って何? | 留学・ワーホリ・海外留学・語学留学は留学ドットコム

カテゴリー:ニュース

日本は「ロックダウン」できない?そもそも「緊急事態宣言」って何?

公開:2020/04/10 著者:河端 健司 51595 Views

こんにちは!フィリピン留学のかわけんです。

 

2020年4月現在、フィリピンは新型コロナウイルスの影響で「ロックダウン」中です。

 

一方、日本では4月7日(火)に安倍首相より7都府県に対して「緊急事態宣言」が発令されました。これは、5月6日(水)まで有効とのこと。

フィリピンを含む諸外国ではロックダウンが実施されており、ニュースを通じてロックダウンという言葉自体は多くの方がご存知だと思います。

そのため、「緊急事態宣言=ロックダウン?」と混乱してしまう人もいると思います。

 

しかし、フィリピンなど諸外国の「ロックダウン」と、日本の「緊急事態宣言」はちょっと違うんですね!

 

今回のコラムでは、「そもそも緊急事態宣言って何?」をテーマに書きます。海外と日本のシステムの違いを知っておくことは留学においても重要なので、留学準備としてもご参考になればと思います。

海外との違いを知っておいた方がいい理由

今、私が住んでいるフィリピンは3月17日(火)から「ロックダウン」が行われています。ロックダウンとは、日本語に訳すと「都市封鎖」です。

フィリピンの場合、細かなルールは「バランガイ」という自治区によって定められています。

私が滞在しているバギオで言えば、原則住民以外はバギオに入ることができません。「バギオ」というのは、日本で言えば「市」にあたります。

 

同じ「県」であっても、「市」が違えば入ることができないというのが現状です。

 

私の身近にもいるんですが、「隣の市」に住んでいるフィリピン人の先生がいます。その先生は「バギオ住民」ではないのでバギオに入ることができていません。

ニューヨークやパリなど、厳格に「ロックダウン」がされている国や地域が多いのが現在の世界の状況ですね。

新型コロナの感染状況を危惧して、「日本でもロックダウンするの?」という疑問が一部で上がっています。

 

しかしながら、現行の日本の法律ではそれができないという認識が示されています。

 

4月1日の(水)参院決算委員会で安倍晋三首相は「緊急事態宣言」について以下のように認識を示しています。

 

「これが直ちにロックダウン=都市の封鎖ということでもなくフランスのようなロックダウンができるのかといえば、できない。そこには誤解がある。さまざまな要請はすることになるかもしれないが、フランスなどで行っているものとは、やや性格は違うものだ」

出典: NHK政治マガジン
https://www.nhk.or.jp/politics/articles/statement/32914.html

 

また、小池百合子東京都知事は4月3日(金)の「Nikkei Asian Review」の取材に対して以下のようにコメントしています。(原文は英文です。)

 

“Because Japan’s law puts emphasis on protecting personal rights, a lockdown is impossible,”

「日本の法律は人権の保護を重視しているため、ロックダウンは不可能」

 

出典: NIKKEI ASIAN REVIEW
https://asia.nikkei.com/Editor-s-Picks/Interview/Tokyo-governor-says-lockdown-in-Japan-is-impossible

 

このように、ロックダウンできるかどうかは、国の法律や方針が関係しているんですね。

 

このコラムは「留学コラム」なので、留学に繋げて書きますね。この新型コロナが終息して留学を再開することができたとします。語学学校に通うと、海外の色んな国の友達を作ることができるでしょう。

きっと、新型コロナウイルスの話をプライベートでも授業の中でもディスカッションをする機会があるでしょう。

自分も実際に留学している時、海外の友達や先生から日本の政治について聞かれることがありました。

 

そういった際、日本はどうしてロックダウンをしなかった(できなかった)のかなどのバックグラウンドを語ることができるというのは、「日本人」として海外の人と議論するうえで大切です。

 

自分もこのコラムを書きながら、日本の法律や仕組みについて勉強させてもらっています。

これを機会に留学する時のことを想定して、日本のことをもっと知っておきましょう。むしろ、知っておかないと留学後に苦い思い出になることは必至です。

実際、留学(ワーホリ)すると分かりますが、外国人留学生は皆さんが思っている以上に自国のことを良く学んでいて、政治や歴史などに対し意見を持っていることに驚かされるはずです。

 

ざっくりと知っておこう「緊急事態宣言」

ということで、ざっくりと「緊急事態宣言」について説明します。

 

(1)緊急事態宣言の概要

・根拠法: 新型インフルエンザ等対策特別措置法(令和2年3月13日公布、3月14日施行)

・誰が発令できるのか?: 首相

・何を発令するのか?: 対象地域や期間

・発令後は誰が何をするのか?: 対象地域の知事が具体的な要請・指示を出す

・発令の要件は?: (1)国民の生命や健康に著しく重大な被害を与える恐れ、(2)全国的かつ急速なまん延により国民生活と経済に甚大な影響を及ぼす恐れ、の2つが当てはまる

 

首相が発令できるのですが、独断ではできません。

感染症の専門家で構成される「諮問委員会」に意見を聞き、要件を満たすと評価されることが必要です。

 

(2)手続きの流れ

簡単な流れとしては、①~⑤まで以下のように行われます。

 

① 首相が諮問委員会に要件を満たすか諮問

② 諮問委員会が「評価する」と判断

③ 政府が衆参両院の議院運営委員会に事前報告

④ 緊急事態宣言の発令・公示

⑤ 対象地域の知事が具体的な要請・指示を出す

 

報道で「緊急事態宣言の準備」といった内容のニュースが実際に発令される前に流れていました。

この「準備」に対して、「何の準備?」、「どうして早く発令しないの?」と思った方もいると思います。

その理由には、こういった手続きが必要なことが挙げられます。

 

(3)どうして「新型“インフルエンザ”等対策特別措置法」?

この根拠法は、「新型“インフルエンザ”等対策特別措置法」です。「新型“コロナ”等対策特別措置法」ではないんですね。

この法律は、平成24年に新型インフルエンザ等の感染症に対する対策強化を図るために成立された法律です。

この法律には、2019年12月以降世界的に大流行している「新型コロナウイルス感染症」は対象として含まれていませんでした。

 

それが2020年3月13日に改正法が成立されて、「新型コロナウイルス感染症」が対象に追加されることになりました。

 

なお、新型コロナウイルス感染症を「新型インフルエンザ等」とみなす期間が決まっており、2021年1月31日までとなっております。

今回の改正によって何ができるようになったかというと、その一つが「緊急事態宣言」なのです。

しかし、この法律では今ニュース等でよく耳にする「ロックダウン」については明記されていません。

 

したがって、現行のシステムでは日本はロックダウンが法的にできないと認識されています。

 

外出しても「罰則」はない?

 

「緊急事態宣言=ロックダウンじゃないの?」と思ってしまう人もいるかもしれません。難しくて、ややこしいですよね。だけど、イコールじゃないんですね。

 

日本は「緊急事態宣言」が発令されたけど、都市は封鎖されていないし、外出も「禁止」ではないんですね。

 

なぜなのでしょう?それは、根拠法である「新型インフルエンザ等対策特別措置法」に明記されています。「第四十五条」に「感染を防止するための協力要請等」に関する記述があります。

長いので全文は割愛しますが、そこに特定都道府県知事は「感染の防止に必要な協力を“要請”することができる」とあります。

よく政治家の方が「自粛を要請します。」と言っているのを耳にしますよね。それはこのように法律に「要請」と明文化されているからなんです。

 

この「要請」に対し、正当な理由なしに従わないとどうなるかというと、特定都道府県知事が「当該要請に係る措置を講ずべきことを“指示”することができる」と明記されています。

 

つまり、正当な理由なしに従わないと「指示」をする、というレベルに留まります。そうなんです。「命令」はできないんです。

「指示」をした場合は、その旨を公表しなければいけません。具体的には、指示に従わなかった施設等の名称を公表するといった対応になります。

ただし、諸外国とは異なり「罰則」に関する規定はありません。企業名(施設名)を公表することにより、社会的制裁を加える程度に留まります。

 

「外出は自粛してください。」または「お店の営業は自粛してください。」と「要請」はできるけれど、それを破ったとしても「罰則」はないというのが現行のシステムです。

 

法律の異なる海外では外出をすれば、罰金が課せられたりしますが、そういったシステムを持つ海外と日本の大きな違いは、この法律の違いにあります。

だからこそ、日本の場合は強制力が弱いため、国民一人一人の自発的な協力が必要になっているのです。

 

じゃあ何が変わるの?

では、何が変わっていくのでしょうか?

 

細かな要請内容は、今回対象となった都府県のそれぞれの知事が決めていきます。

 

最低限の生活を維持するために、通常通り稼働するものもあります。

現時点で通常と「変わらない」予定の機関は、鉄道やバスなどの「公共交通機関」、食料品や医薬品など生活必需品を扱う「スーパーマーケット」「ドラッグストア」「コンビニ等」が挙げられます。

一方、「変わる」可能性が高いものは、娯楽施設などの人が集まる施設や学校等が挙げられ、このような機関は知事から使用の制限や休校が要請される可能性があります。

 

これらは各都府県の知事が決定し、要請・指示していくので地域によって「変わる」ことと「変わらない」ことが多少なりとも異なってくると考えられます。

 

また、「要請」あるいは「指示」が法的には強制力がないことから、企業等によっても対応が異なってくることも十分に考えられます。

例えば、大手飲食チェーンの「マクドナルド」と「スターバックス」でも対応が異なっています。(4月9日現在)

マクドナルドは営業時間短縮の検討や従業員で感染者が発生した場合は、その店舗の営業を中止するなどの措置を取っております。

 

 

一方、スターバックスは今回緊急事態宣言が発令された東京都など、7都府県約850店舗を4月9日から当面の間休業すると発表しております。

 

 

このように地域や業種、それぞれの企業等によって対応が異なっています。そういった点に関して言えば、私が今住んでいるフィリピンとは大きく違います。

フィリピンのバギオは原則として外出禁止中で、違反すれば罰則もあります。外出をするには許可書が必要です。夜21時以降の外出は禁止との門限もあります。

お店の営業もほとんどの業種で営業が禁止されています。

 

それに比べ、日本は良く言えば、国民一人一人に判断する権利が与えられているという状況だと思います。

 

対象となった地域にお住まいの方は、知事等から要請内容や企業等の対応がアップデートされていくと思いますので、必要に応じて細かくチェックしておく必要があります。

また、対象地域は今後も追加される可能性がありますし、期間も延長される可能性があります。

日本の緊急事態宣言は、法律で罰則等を与えることができる諸外国とは違います。だからこそ、個人個人が高い意識を持ち、協力していくことが必要だと思います。

 

【まとめ】 正しい知識を持って協力して行こう!

 

以上、今回は「そもそも緊急事態宣言って何?」をテーマに書かせてもらいました。

今回の内容をおさらいします。

 

1. 海外のロックダウンと緊急事態宣言の違いを知っておいた方が良い。留学をすれば海外の友達と新型コロナウイルスに関する話題は必ず出てくる。
2. 緊急事態宣言とは、首相が「発令」して、対象地域の知事が具体的な「要請」や「指示」を出す。諸外国の「ロックダウン」とは違うもの。
3. 諸外国とは違い、「要請」や「指示」なので法的な強制力はない。
4. 地域や業種・企業等によって、休業や営業を続けるなどの対応が分かれる。

 

このコラムの中では、「要請」・「指示」という言葉を何度も使いました。この部分が強制力を持つ諸外国とは大きく異なります。

根拠法の「新型インフルエンザ等対策特別措置法」の性質上、法的に強制力がないため「ロックダウン」をしている海外の国とは異なる状況にあるのが日本です。

しかし、「緊急事態宣言」という言葉が表しているように、緊急を要する事態になっていることには間違いありません。

 

このようなシステムだからこそ、日本の場合には一人一人の理解や協力が一層必要になってきます。

 

今まで以上に強い意識を持って、不要不急の外出自粛には協力していかなければなりません。

このコラムを通して、少しでも「緊急事態宣言」に対する認識や日本と海外との違いが深まっていただければ幸いです。

現在、私は「ロックダウン」中のフィリピンに住んでいます。フィリピンの新型コロナウイルスの状況は、前記事で紹介していますので、併せてご覧ください。

 

 

フィリピンのコロナの最新状況をこのコラムやYouTubeでシェアしていますので、よろしければそちらもご覧ください。

 

 

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